若者と冒険心-「香田証正さんはなぜ殺されたのか」2006年10月06日

「香田証正さんはなぜ殺されたのか」(下川裕治 新潮社)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/410300231X/sr=1-8/qid=1160486067/ref=sr_1_8/503-1170862-1295145?ie=UTF8&s=books

 以前より気になっていたこの本を読了。2年前、イラクでの香田証正さん殺害事件の際、世論は激しいバッシングを浴びせました。私の知人もほとんどが批判的な中、正直私は一人違和感が拭えませんでした。私もかっては彼と同じような「バックパッカー」だったからです。

 作者の下川氏は「12万円で世界を歩く」などの著書をもつ旅行作家です。下川氏以前の旅行作品というと、沢木耕太郎の「深夜特急」http://www.amazon.co.jp/gp/product/4101235058/sr=1-2/qid=1160488038/ref=sr_1_2/503-1170862-1295145?ie=UTF8&s=books や、もっと古典だと小田実の「なんでも見てやろう」http://www.amazon.co.jp/gp/product/4061315838/sr=1-1/qid=1160488119/ref=sr_1_1/503-1170862-1295145?ie=UTF8&s=books あたりが有名でしたが、さすがに時代が古臭い(私は好きでしたが)感もあり、下川氏の肩の力の抜けた紀行文が当時の学生にはうけていたことを記憶しています。そんな下川氏が社会的事件を扱った本を書くのは初めてのはず。アマゾンで検索しても、この本は完全に浮いています。

 読後感は「言いようのない、やり切れなさ」。これに尽きます。香田さん殺害事件そのものよりも、その後の日本社会のバッシングに対して強くそれを感じます。私も昔は渡航自粛勧告中のカンボジアに陸路入国し銃撃されたり、暴動が多発するパキスタンのカラチで空港に逃げ込んで眠れぬ一夜を過ごした経験もあります。でも、それって若者の特権じゃないんでしょうか??

 4年前、徒手空拳で市議選に出馬した私も似たようなもんです。政治や選挙に無知だから可能だった一種の「冒険」だったのかもしれません。もし当時の私みたいな奴が同じ条件で「選挙に出たい」なんて言ってたら、今の私は間違いなく止めるでしょう。「バカなことは止めとけ」なんて言ってね。しかし、大人にとって理解しがたい行動が、時として世の中の閉塞をぶち破っていくことも真理なのでは?

 ニュージーランドで香田さんに英語をおしえた教師は日本人の反応に顔をしかめてこう言ったそうです。
「若者はもともと無知でバカなものでしょ。でも彼らには、年とった者にはない冒険心がある。その経験を通して成長していくもんなんですよ。それを周りの人々や社会がとやかくいってはいけない」

コメント

_ kaz ― 2011年06月14日 04時40分

ブログ拝見させて頂きました。自分も元バックパッカーです。 香田君事件の日本での反応(自己責任論)には当時、自分も腑に落ちない反骨心を抱いていました。自分がバックパッカーで香田君のことを自分自身と投影していたのだと思います。ニュージーランドの英語教師の発言を知り、求めていた答えを見つけることが出来ました。ありがとうございます。

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