大洲市議会厚生文教委員会行政視察 令和8年(2026)5月21日 秋田県秋田市 ― 2026年05月21日


20260521秋田市

令和8年度 大洲市議会厚生文教委員会行政視察報告

令和8年5月21日
秋田県秋田市

 

視察事項

秋田市において、在宅子育て世帯を対象とした「子育てサポートクーポン券」および「多子世帯サポートクーポン券」の制度について説明を受けた。

この制度は、保育所や幼稚園等に通っていない就学前児童を養育する世帯を主な対象としており、多子世帯については第3子以降の子どもが対象となる。年度ごとに申請に基づいて交付され、窓口で即日交付される仕組みとなっている。

利用できる内容は、一時預かり、絵本購入、家族写真の撮影、公共施設の利用、病児保育、子育てタクシー、親子向けイベントなど多岐にわたる。単なる経済的支援ではなく、在宅で子育てをしている保護者の孤立防止や育児不安の軽減、親子の外出機会の創出を目的としている点が特徴である。

また、交付児童の8割以上が0歳児であることから、0歳児家庭でも利用しやすい制度設計が課題となっている。従来の遠足型プランは、0歳児には利用しにくいとの声を受けて見直され、親子向け講座や子育てサロン等にも利用できる「親子でほっとリフレッシュプラン」が新設された。

利用状況では、絵本プランの利用が最も多く、次いで写真プラン、一時預かりプランが利用されている。一方で、病児保育プランについては、在宅子育て世帯が主な対象であることから利用実績は少ない状況であった。

利用者アンケートでは、制度に対する満足度は高い一方で、ミルクやおむつなどの日用品、消耗品にも利用できるようにしてほしいとの意見も寄せられている。また、クーポンの記名作業や申請手続き、事業者側の請求手続きなど、運用面での改善余地も確認された。

デジタル申請については、現時点では未対応であり、紙クーポンの交付や事業者請求も含めた一体的な電子化が今後の課題とされている。

 

質疑応答

質疑では、まず0歳児の利用割合が高い理由について確認した。秋田市からは、保育所等への入所年齢が低年齢化していることや、1歳前後から保育所に預ける家庭が多いことが背景として説明された。

在宅で子育てしている理由の把握についても意見交換を行った。保育所入所の場合は、保護者の就労など保育を必要とする理由が必要となるが、在宅で子育てをしていること自体には理由の証明が求められない。そのため、在宅である理由を制度上詳細に把握することは難しいとの説明であった。

病児保育プランの利用が少ない理由については、在宅子育て世帯では、子どもが病気の場合も保護者自身が見ることが多く、利用ニーズが限定的であるとの説明があった。一方で、万一の際に利用できる選択肢として、病児保育プランを残しているとのことであった。

また、ミルクやおむつなどの日用品にクーポンを使いたいという利用者の声について質問したところ、現時点では市全体として同様の消耗品支援事業は実施していないとのことであった。愛媛県内で実施されているおむつ券のような事例も紹介しながら、子育て家庭の実感に即した支援のあり方について意見交換を行った。

クーポン1枚ごとの記名については、利用者・事業者双方の負担になっている点を確認した。券面に通し番号を付けるなど、記名負担を軽減する方法についても意見を述べた。

多子世帯サポートクーポン券の交付率が低い理由については、対象確認が複雑であり、交付窓口を限定していることが一因ではないかとの説明があった。これに対し、対象世帯へのプッシュ型の案内、出生届提出時の案内、児童手当情報等の活用など、より確実に対象者へ制度を届ける方法について意見交換を行った。

さらに、制度を知らなかった、申請を忘れていた、使い方が分からなかったという声もあることから、今後は公式LINEやInstagramなどを活用し、制度内容や利用方法をより分かりやすく周知していく方針が示された。

 

所感

今回の視察を通じて、在宅子育て世帯への支援は、保育所等を利用している世帯との公平性を考えるうえでも重要な施策であると感じた。

特に印象的だったのは、この制度が単なる金銭的支援ではなく、在宅で子育てをしている保護者の孤立防止や育児不安の軽減、親子の外出機会の創出を重視している点である。子育て支援は、保育所に通う家庭だけを対象とするものではなく、家庭で子どもを育てている世帯にも目を向ける必要がある。

一方で、制度開始から時間が経過する中で、利用者の中心が0歳児家庭へと変化していることも明らかになった。交付児童の多くが0歳児であるにもかかわらず、従来のプランが必ずしも0歳児家庭にとって利用しやすい内容ではなかった点は課題である。その意味で、親子向け講座や子育てサロンなど、0歳児でも利用しやすいプランへ見直したことは評価できる。

また、利用者からミルクやおむつなど日用品への支援を求める声が多いことは、子育て家庭の実感をよく表している。親子の外出機会や交流機会をつくることは重要である一方、日常的に必要となる消耗品への経済的負担も大きい。制度の目的を維持しながら、利用者の実情にどのように応えていくかが今後の課題である。

運用面では、クーポンの記名作業、窓口申請、事業者側の請求手続きなどに改善の余地がある。特に多子世帯サポートクーポン券については、交付率向上のため、窓口の拡大、プッシュ型の案内、出生届や児童手当情報との連携などを検討する価値があると感じた。

デジタル化についても、申請だけを電子化するのではなく、クーポンの発行、利用、事業者請求までを一体的に見直す必要がある。利用者と事業者の双方にとって使いやすい制度とするためには、制度設計と事務負担の両面から検討することが重要である。

 

総論

秋田市の子育てサポートクーポン券は、在宅子育て世帯を地域全体で支えるための重要な取り組みである。保育サービスを利用していない家庭への単なる代替支援ではなく、孤立防止、育児負担の軽減、親子の交流機会の確保を目的としている点に大きな意義がある。

一方で、制度開始から時間が経過する中で、利用者層や子育て家庭のニーズは変化している。0歳児家庭の利用が多い現状を踏まえれば、制度内容も現状に合わせて柔軟に見直していく必要がある。

絵本プランや写真プランのように利用しやすいメニューがある一方、病児保育のように利用実績が少ないプランもある。今後は、利用実態を丁寧に検証し、必要なメニューを残しながら、より使いやすい制度へと改善していくことが求められる。

また、制度を必要とする家庭に確実に届けるためには、周知方法の工夫、申請手続きの簡素化、対象者への積極的な案内、電子化の検討が欠かせない。特に子育て世帯は日々の生活に追われており、制度を知っていても申請や利用まで至らない場合がある。行政側から分かりやすく、使いやすく届ける姿勢が重要である。

在宅子育て世帯への支援は、少子化対策や子育て支援の中でも見落とされがちな分野である。しかし、家庭で子どもを育てる保護者の不安や負担を軽減し、地域とのつながりをつくることは、子どもの健やかな成長にもつながる。

今回の視察で得た知見を踏まえ、大洲市においても、子育て家庭の実情に即した支援のあり方、制度の周知、申請手続きの改善、在宅子育て世帯への支援充実について、今後の議会活動に生かしていきたい。
 

大洲市議会厚生文教委員会行政視察 令和8年(2026)5月21日 秋田県能代市 ― 2026年05月21日


20260521秋田県能代市

令和8年度 大洲市議会厚生文教委員会行政視察報告

令和8年5月21日
秋田県能代市
視察先:能代ふれあいプラザ サンピノ


視察事項

秋田県能代市において、複合施設「能代ふれあいプラザ サンピノ」を視察した。

同施設は、急速な高齢化、人口減少、中心市街地の空洞化といった地域課題に対応するため、在宅福祉サービス、子育て支援、高齢者住宅、世代間交流の拠点として整備された施設である。平成13年9月に着工し、平成16年4月1日に供用開始されている。

施設は能代市の中心市街地に位置し、市役所から徒歩圏内にあるほか、近隣には警察署、裁判所、郵便局などの公共施設も立地している。中心部に福祉、子育て、住宅、交流の機能を集約することで、市民が利用しやすい環境が整えられている。

建物は鉄骨・鉄筋コンクリート造で、3階建て、一部8階建てとなっている。延床面積は7,224.94平方メートル、敷地面積は4,547.91平方メートルであり、事業費は約25億140万7千円である。能代市は木材産業が盛んな地域であることから、施設内外には杉板、木製手すり、木製フロア、木製サッシなどが活用され、地域性を反映した温かみのある空間づくりがなされていた。

施設の構成として、1階には保育所、子育て支援センター、デイサービスセンター、エントランスホール、管理人室が配置されている。2階には集会交流室、高齢者友愛センター、社会福祉協議会、ボランティアセンター、ラウンジテラスが設けられている。3階から8階は市営住宅であり、高齢者単身向け、高齢者夫婦向け、ファミリー向けなど、合計40戸が整備されている。施設全体としてバリアフリーにも配慮され、1・2階用のエレベーターと住宅階用のエレベーターがそれぞれ設置されている。

同施設の大きな特徴は、複数の機能を単に同じ建物内に配置するだけでなく、保育所の子どもたち、デイサービス利用者、住宅入居者、地域住民が自然に交流できる仕組みを持っている点である。施設内交流として、保育所の子どもたちとデイサービス利用者による誕生会、子どもの日、ハロウィン、クリスマスなどの行事が実施されている。また、地域間交流として、七夕行事、サンピノ祭、新年の集いなどが行われている。

サンピノ祭では、保育所児童のお遊戯、小学生による演技、遊びコーナー、作品展示などが行われ、約330人が参加した。新年の集いでは、餅つき、獅子舞、おはじき、こま回しなどを通じて世代間交流が行われ、約580人が参加している。これらの継続的な交流により、子ども、大人、高齢者が顔見知りとなり、日常的なあいさつや見守りにつながっているとの説明があった。

一方で、実行委員やボランティアの高齢化、担い手不足、事業内容のマンネリ化が課題となっており、今後の交流事業のあり方についても検討が必要とされている。


質疑応答

市営住宅の入居基準について質問したところ、4階から8階に整備されている市営住宅は全40戸で、現在39戸が入居済みとのことであった。高齢者向け住宅には年齢要件が設けられており、その他の要件については、収入基準や住宅困窮度など、一般的な公営住宅と同様であるとの説明であった。中心市街地にあり、多世代交流ができる施設であることから、入居希望は多いものと考えられる。

交流事業の運営体制については、イベント実行委員会が中心となり、ボランティアや関係団体も協力して実施しているとのことであった。ただし、実行委員やボランティアの高齢化により、以前ほど機動的に動ける人が少なくなっているとの課題も示された。一方で、高校生ボランティアや企業から、子ども向けコーナーへの協力の申し出もあるとのことであり、地域の多様な主体との連携が模索されている。

健康づくりや母子保健事業については、健康診断などの健康関連事業は同施設ではなく、別の保健センター等で実施しているとのことであった。子育て支援課の事業として母親学級などが施設内で開催されることはあるが、0歳児健診や3歳児健診などの母子保健事業は実施していない。子育て支援センターは保育所に併設されているものの、母子保健機能については別施設で担っており、機能分担が明確にされていた。

貸館利用と使用料については、集会交流室などの貸館利用は有料であり、集会交流室は1時間210円、電気等を使用する場合は追加で1時間90円とのことであった。高齢者友愛センターについては、60歳以上の利用者が多い団体の場合、1時間150円で利用できる。公益的な市の事業等では減免の対象となる場合があるが、団体に対する施設独自の補助金制度は特にないとの説明であった。

災害時の避難所機能については、同施設は災害時の避難所として位置づけられているとのことであった。これまで避難所として実際に使用された例は多くないものの、停電時に備えて発電機が設置されている。食料備蓄については、施設単独で大きく備えているわけではなく、市役所が近接していることも踏まえた運用となっている。

入居者と施設サービスの関係については、市営住宅の入居者が1階のデイサービスセンターの食堂を日常的に利用する仕組みではないとのことであった。食堂はデイサービスセンター利用者向けである。ただし、住宅入居者の中にはデイサービス等を利用している人もおり、同一建物内に高齢者住宅と福祉サービスがあることは、利便性の面で大きな利点があると感じた。

施設のセキュリティについては、基本的に市民が利用しやすい開かれた施設となっている一方で、朝7時30分から夜10時までは管理人を配置し、保育所については入口で来所者対応を行うなど、安全対策が講じられている。管理人がいない時間帯は、住居部分以外を施錠し、住宅部分の入口のみ24時間利用可能とする運用となっている。

発達支援に関する相談窓口については、サンピノ内に専門窓口は設置されていないものの、市民福祉部福祉課、子育て支援課で各種相談を受けているとのことであった。また、子育て支援センター利用時に相談を受けることもある。さらに、3歳児健診から就学時健診への橋渡しとして、教育委員会学校教育課が5歳児親子相談を実施しており、支援が必要と判断された幼児には、幼児通級指導教室で小集団指導を行い、集団生活への適応を支援している。

地域包括支援センターについては、施設開設当初は2階に設置され、1カ所で事業を行っていたが、その後、地域性を踏まえて3カ所に分けて民間委託されたとのことであった。委託先は社会福祉協議会や病院系の社会福祉法人などであり、地域に近い場所で相談支援を行う体制へ移行している。

施設整備時の議会での議論については、平成8年9月に市議会にニューライフセンター建設特別委員会を設置し、施設機能、既存施設との調整、改築・統合との整合性、複合施設のメリット・デメリットなどについて審議が行われたとの説明があった。また、民間保育施設や民間アパートへの影響、周辺自治会や近隣住民との関係、高層建築による電波障害、日照、道路幅、駐車場、避難所機能なども論点となった。基本設計、本体工事契約等を可決し、平成13年12月に特別委員会は解散している。


所感

能代ふれあいプラザ サンピノは、保育所、子育て支援、デイサービス、高齢者住宅、社会福祉協議会、ボランティアセンター、交流施設を一体的に配置し、多世代交流を実践する複合施設として、特色ある取り組みが行われていた。

特に印象的であったのは、子どもと高齢者が同じ建物内で日常的に交流できる仕組みである。これは単なるイベント交流にとどまらず、日常の中で顔の見える関係をつくる取り組みであり、地域福祉の基盤づくりとして大きな意味を持つ。保育所の子どもたちがデイサービス利用者の誕生会に参加するなど、自然な形で世代間交流が行われていることは、子どもたちの思いやりや高齢者を敬う気持ちを育む上でも意義が大きい。高齢者にとっても、子どもたちとの交流は生活の楽しみや生きがいにつながるものと考えられる。

また、市営住宅を施設上層階に配置している点も特徴的である。中心市街地の居住促進と福祉サービスの近接化を同時に図る取り組みであり、公共施設の複合化を考える上で参考となる事例であった。

一方で、すべての子育て、福祉、保健機能を一施設に集約しているわけではない点も重要である。母子保健や健康診断などは別施設で担っており、施設ごとの役割分担が明確にされていた。複合施設を整備する際には、単に多くの機能を一か所に集めるのではなく、施設の目的、利用者の動線、専門機能との役割分担を丁寧に整理する必要がある。

交流事業については、地域団体やボランティアの協力により継続されているが、担い手の高齢化や事業のマンネリ化という課題も明らかであった。本市においても、地域活動の担い手不足は共通する課題である。行政だけでなく、地域、学校、企業、各種団体との連携を広げ、持続可能な運営体制を構築していく必要がある。

災害時の避難所機能についても、施設が避難所に位置づけられていることに加え、日常的な交流を通じて生まれる顔の見える関係が、安否確認や避難支援につながる可能性を感じた。福祉施設の役割は、サービスを提供することだけではない。地域のつながりを育て、いざという時に支え合える関係を日常からつくる拠点としての役割も重要である。


総論

能代ふれあいプラザ サンピノは、少子高齢化、人口減少、中心市街地の空洞化という地域課題に対し、福祉、子育て、居住、交流の機能を組み合わせて対応しようとする先進的な複合施設である。

施設整備にあたっては、在宅福祉サービスの拠点づくり、子育て支援、高齢者住宅の整備、世代間交流、中心市街地の活性化といった複数の目的が明確に位置づけられていた。供用開始から年月が経過した現在も、七夕行事、サンピノ祭、新年の集いなどを通じて、地域に開かれた交流拠点としての役割を果たしている。

特に、子どもと高齢者が日常的に関わる環境は、地域共生社会の実現に向けた実践例として評価できる。施設内で生まれる自然な交流は、子どもの育ち、高齢者の生きがい、地域の見守り、防災時の支え合いにもつながる可能性を持っている。

一方で、人口減少や少子高齢化が当初の想定を超えて進む中、施設の役割はさらに大きくなっている。その反面、実行委員やボランティアの高齢化、担い手不足、事業の継続性、内容の見直しといった課題も生じている。施設を整備するだけでなく、整備後にどのように運営し、地域とともに育てていくかが重要である。

本市においても、公共施設の複合化や再編を考える際には、単なる施設の集約ではなく、地域のつながりを生み出す仕組みをどう設計するかが問われる。また、子育て支援、高齢者福祉、地域福祉、防災、中心市街地活性化を別々の課題として捉えるのではなく、相互に関連する地域課題として総合的に考える必要がある。

今回の視察を通じて、施設整備そのもの以上に、施設を活用して人と人をつなぐ運営体制、地域との協働、継続的な交流事業の重要性を学ぶことができた。今後の本市における福祉施策、子育て支援、公共施設のあり方、地域コミュニティの再構築を考える上で、大いに参考となる視察であった。